今月のトップラン vol.01 山本 夏生選手インタビュー
自分の成長を感じる瞬間が何より楽しい!
世界の大舞台を目指す15歳の挑戦
学校のない日は、姫路大学女子硬式テニス部の監督でもある父・山本康博さんと共に8時半には加古川のテニスコートへやってくる山本夏生選手。夜は19時まで練習と一日のほとんどをテニスコートで過ごすといいます。
とはいえ、まだまだ遊びたい盛りの15歳。「練習はつらくない?」と聞いてみると、「まったくないです」とにっこり。「放っておけば365日練習しますよ」とお父さんもコーチも苦笑いするほど。それほどテニスに夢中になれる理由はいったいどこにあるのでしょうか。
◆父が教えてくれた「テニスは楽しくやるもの」
―テニスを始めたきっかけは?
父がもともとテニス選手。大学時代には、全日本大学王座決定戦で4年連続日本一に輝いたこともあるほど。
でもだからと言って、テニスをやりなさいと言われたことは一度もなく、小学2年生まではサッカーをしていました。テニスをやっていたのは4つ上の兄。たまたま兄の練習を見る機会があって、そのとき何気なくラケットをもってみたら、いつの間にかテニスの魅力に引き込まれていました。
◆今は勝つこと以上にテニスが上手くなりたい!
―でもテニスをする中でしんどいこと、つらいと感じることはありますよね。
ないです!ただただテニスが上手くなりたいという気持ちがあるだけです。
テニスをしていると、自分の成長を感じられる。その瞬間がすごく面白くて楽しくて、ご褒美をもらったみたいなうれしさがある。もちろん試合には勝ちたいし、勝てば自信にはなるけれど、今は勝つことよりもテニスが上手くなることが一番の喜び。だからプレッシャーをかけられてしんどいとか、練習がつらいとかはまったくありません。たまに夜更かししてしまって、寝不足がつらいぐらいです。
―印象に残っている試合は?
一番うれしかったのは、去年の夏にはじめて全日本ジュニア(全日本ジュニアテニス選手権 ’19 14歳以下男子シングルスの部)で優勝したこと。
悔しかったのは、本当につい最近のことなんですが、この夏に兵庫県の大会の、しかも1回戦で負けたこと。すべてが上手くかみ合わなくて…精神的に守りに入ってしまったし、弱気になって自分のプレーができなかった。それが悔しくて。すごく後悔しています。この2年ぐらいは負けたことがなかったので余計に悔しい。
―試合に負けたらやっぱりお父さんやコーチに怒られる!?
それはないです(笑)。
特に父は、試合の結果を見てあれこれ言うことはありません。どちらかと言えば、試合前の準備のことを見られている気がします。飲み物の準備とかアップの仕方とか、試合で一番のパフォーマンスをするために、自分なりにどう準備をすればいいのか、あとどういう思いでテニスと向き合うのかをしっかり考えるようにとアドバイスされますね。
―お父さんやコーチからの教えで印象的なことはありますか?
「負けることも必要」ということ。負ければもちろん自信を失うこともあるけれど、つらいとき、悲しいときに立ち上がれる人間は強い。だから負けることは、そういう強さを身に着けるいい機会だと考えるようにしています。
とにかく負けたときは、次の日にいつも以上にいっぱい練習をする。そうやって気持ちを切り替えています。
◆目指すはトップラン発「メイドインジャパン」のプレイヤー 自分の持ち味を大切に
―今後の目標を教えてください。
今はコロナの影響で大きな大会が中止になっていますが、来年もしジュニア・デビスカップがあるなら、絶対そこで優勝したいです。そのためにも今は練習をたくさんしないと。フォア(フォアハンド)を少しずつでも良くしていけば、もっと強くなれると思うので、そこは意識して取り組みたい。あと自分の武器は180センチの背の高さを活かしたサーブ。試合中、自分を助けてくれることも多いサーブを自分の持ち味としてもっと磨いていきたいです。
―10年後にはどんな自分がテニスコートにいますか?
やっぱり世界のトップになって活躍していたい。錦織選手は18歳で世界ツアーのタイトルをとっている。あと3年で自分も同じ年になるので、そこは一つの大きな目標になっています。でも錦織選手のようになりたいではなくて、自分は自分なりの持ち味やスタイルをもった日本育ちの選手として、このトップランから世界の大舞台に飛び出していきたいです。
澁谷 竜矢コーチより
とにかく向上心の強さは誰にも負けていないのではないでしょうか。時間があればプロ選手の試合を見て研究していますし、練習も決して手を抜かない。その熱心さに周囲が心配するほどです。
しかし、そのテニスが好きだという気持ちをずっと持ち続けて、世界へと羽ばたいていってほしい。それだけの素質が彼にはありますし、その日も決して遠くはないでしょう。もちろんそこまで行く過程で壁にぶち当たることも失敗することもあると思いますが、それを乗り越えて大きく成長していく姿を見るのも、私たちコーチの楽しみでもあります。
プロフィール
山本 夏生(やまもと なつき) 選手
トップランテニスカレッジ西神戸校所属。
中学3年生(15歳)。
2021年4月 相生学院高等学校入学予定。
小学3年生からテニスを習い始め、テニス歴は6年。約180センチの身長から繰り出される安定感のあるサーブを武器に、2019年には「全日本ジュニアテニス選手権 ’19 14歳以下男子シングルスの部」で優勝。現在、日本のテニス界で最も将来を嘱望されるジュニア選手の一人。好きな選手は、39歳の今もトップアスリートとして活躍を続けるロジャー・フェデラー選手。